
インド型品種「IR64」と「IR64+SPIKE」の水田での圃場収量試験結果。SPIKEを導入したイネでは収量が13~36%増加。*は5%水準で有意、**は1%水準で有意に増加したことを示す。バーは標準偏差(提供:国際農林水産業研究センター)
(独)国際農林水産業研究センターと(独)農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)作物研究所、首都大学東京は12月2日、インドネシアの在来イネから、熱帯地方で育つイネの品種の収量を最大で13%~36%増やす遺伝子を発見したと発表した。この遺伝子を交配育種でインド型品種(インディカ品種)に導入したところ、約2割の収量増加が認められたという。熱帯地域における食料安定供給に役立つとしている。
■普及品種のさらなる改良へ
発見したのは「SPIKE」と名付けられた収量性向上遺伝子。共同研究チームは、先に見出された一穂あたりの籾(もみ)の数を増大させる遺伝子座(染色体領域)を詳細に解析し、籾の増加や葉の幅を広げる働きをするSPIKE遺伝子を特定することに成功した。
この遺伝子を導入したインド型品種のIR64でこれらの働きを確認するとともに、育成した系統をフィリピンにある国際稲研究所(IRRI)の圃場(ほじょう)で栽培し、13%~36%の収量増加を確認した。
また、有用遺伝子の存在位置の目印となるDNA配列を利用した交配育種(DNAマーカー育種)によってこの遺伝子を導入したインド型品種IRRI146では、籾数や葉の幅で同様の効果を認め、収量は18%増加したという。
さらに、東南・南アジアのインド型品種5品種にDNAマーカー育種でSPIKE遺伝子を導入したところ、すべての品種で一穂あたりの籾数の増加が認められたという。
研究チームは今回の成果をアジア・アフリカの普及品種のさらなる改良や、日本の飼料稲品種の改良につなげたいとしている。