室温プロセスでフィルム型色素増感太陽電池
―世界最高水準の変換効率8%を達成、試作に成功
:産業技術総合研究所/積水化学工業

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試作したフィルム型色素増感太陽電池(提供:産業技術総合研究所)

 (独)産業技術総合研究所と積水化学工業は12月6日、次世代の低コスト太陽電池と期待されるフィルム型の色素増感太陽電池を世界で初めて室温プロセスで試作することに成功したと発表した。光のエネルギーを電気に変える変換効率は、有機フィルム基板を用いた色素増感太陽電池としては世界最高水準の8%。新技術は製造工程に従来のような高温を必要とせず量産性にも優れており、フレキシブルな薄型・大面積太陽電池が低コストで実現できると期待している。

 

■薄型・大面積・長尺の電池が低コストで実現へ

 

 色素増感太陽電池は、二酸化チタンなどの酸化物半導体層に色素を吸着させ光エネルギーを電気に変える光電変換層とする有機太陽電池の仲間。通常は二酸化チタンを含むペーストを基板に塗り、500℃程度の高温で焼いてセラミック化する。このため、耐熱性に劣る有機フィルム基板上に作ることは難しかった。
 今回、産総研が室温で高速にセラミック薄膜を形成する技術「AD法」を開発したことに積水化学工業が注目。自社の微粒子制御技術などと組み合わせて色素増感太陽電池用のセラミック膜を形成する技術の共同研究に取り組んだ。
 この結果、色素増感太陽電池の半導体層に適したセラミック膜である二酸化チタン多孔質膜を作ることに成功、太陽電池としての発電性能を確認した。4mm角のガラス基板上にセラミック膜を作った場合には発電効率が9.2%、同じく有機フィルムを基板とした場合は8%で世界最高水準だった。
 有機フィルム基板が使える今回の技術では、帯状のフィルム基板を巻き取りながら色素増感太陽電池を連続生産できる。このため大面積・長尺のフィルム型色素増感太陽電池の量産化が可能で、大幅な低コスト化が実現できるという。
 今後、発電効率や生産性のさらなる向上に取り組むほか、建物の窓や壁面への設置などの用途開発を進め、2015年の商用化を目指す。

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