
開発した昇華法用高昇華型SiC粉末原料(提供:産業技術総合研究所)
(独)産業技術総合研究所と太平洋セメント(株)、屋久島電工(株)は12月3日、パワー半導体用の炭化ケイ素(SiC)単結晶が、これまでより約2倍速く成長するSiC粉末原料を開発したと発表した。現行の製造工程での温度条件を大きく変えずに単結晶の成長速度を速められるため、単結晶インゴット(単結晶の塊)の製造コストを低減できるという。
■サンプル出荷を計画
パワー半導体は電力の制御・変換に用いられる半導体で、これまでのシリコン(Si)製が効率面で限界を迎えていることから、それに代わるものとしてSiC半導体の開発が焦点の一つになっている。
この半導体の基板(ウエハー)を切り出すSiC単結晶インゴットの製造には昇華再結晶法と呼ばれる製法を使うが、結晶成長速度が遅いためにインゴット製造コストが非常に高くなるという問題があった。
昇華再結晶法はSiC粉末を2000℃以上に加熱して昇華(ガス化)し、種結晶上で昇華ガスを再結晶化して単結晶を作るというもの。研究チームは今回、粉末の粒子形状を工夫し、昇華ガスを発生しやすくするとともに、発生ガスの通過性を向上させ、成長速度を約2倍に高めることに成功した。
開発したSiC粉末原料を従来の原料と置き換えるだけでインゴットを高速で成長させることができるという特徴があり、量産性も大きいという。研究チームは新粉末のサンプル出荷を計画中という。