中央大学と(独)物質・材料研究機構などの研究グループは12月2日、3次元構造を持つ単一元素の準結晶を世界で初めて作ることに成功したと発表した。準結晶は結晶とも非晶質とも異なる固体状態の物質だが、従来は複数の元素を含む複雑なものしかなく、その性質には謎が多かった。今回の成果は準結晶形成の仕組みなどの解明を容易にし、今までにない特徴を持つ新材料の開発にもつながると期待している。
■既存の合金系準結晶を基板に鉛原子蒸着
物材機構と中央大のほか、東北大学、英国リバプール大学の研究者の研究グループが作ることに成功した。
準結晶は原子が秩序正しく並ぶ結晶とも、無秩序な非晶質とも異なるが、原子の配列には一定の規則性が見られるため第三の個体と呼ばれる。従来は2種類以上の元素ででき、化学組成や構造が複雑なものしかなく、安定した準結晶状態ができる仕組みや物性などに未解明な部分が多かった。
研究グループは、準結晶が通常の結晶には見られない5角形や10角形の準周期構造を持っていることに注目。これを基板として表面に鉛原子を蒸着させれば、基板と同様の準周期構造を持つ鉛の準結晶ができると考えた。
そこで銀とインジウム、イッテルビウムの3種類の元素でできた既存の合金系準結晶を基板として鉛の準結晶を試作。その結果、できた鉛の準結晶は非常に薄い膜だったが、鉛原子が基板の合金系準結晶と同様の立体的な準周期構造を持って配列した複数の原子層が確認できた。
研究グループは「準結晶の安定性の起源解明や準周期構造による新しい表面物性の発見に役立つ」としており、今後さらに実験条件の最適化などを進める。