厚さ5m未満、強度弱く滑りやすい断層判明
―東日本大震災の震源海底掘削調査でメカニズム解明
:海洋研究開発機構/筑波大学など4大学

 (独)海洋研究開発機構と筑波大学など4大学は12月6日、地球深部掘削船「ちきゅう」による東日本大震災の震源域の海底掘削調査の結果を発表した。掘削地点には海底下820mに地震で壊れた断層があったが、厚さがわずか5m未満で滑りやすい粘土を多量に含んでいたことが巨大地震発生の要因になったと結論付けた。海溝付近での巨大地震・津波の実態を明らかにした重要な成果とみている。

 

■「残留摩擦熱」の直接測定に成功

 

 筑波大、海洋機構のほか京都大学、東北大学、山形大学が国際深海科学掘削計画(IODP)の一環として、地震発生約1年後の2012年4月から7月にかけて震源海域の海底を掘削調査した。地震発生からこれだけ短時日のうちに海溝付近の断層を掘削、直接調査したのは世界でも初めて。
 調査では、地質試料の採取と断層が壊れたときに発生する摩擦熱の名残「残留摩擦熱」を直接測定することに成功した。データを分析したところ、断層には強度が弱く透水性の低い遠洋性粘度(スクメタイト)が約78%と多量に含まれており、断層の厚さも5m未満と薄いことがわかった。これらのデータをもとに地震滑りの再現実験なども行った。
 その結果、研究グループは、今回地震を起こした海底断層は①強度が弱く透水性も低くて滑りやすかった、②滑りの摩擦熱で断層物質に含まれる水が膨張し、さらに滑りやすい状態になった―と推定した。このため非常に小さなせん断応力(断層を滑らせる力)の下で大きな滑りが伝播していったことが実証できたとしている。
 海溝付近の海底断層で起きる巨大地震の実態を解明するうえで残留摩擦熱や断層を構成する岩石の変化を調査することは極めて重要。しかし、地震発生後2年ほど経つと調査が極めて困難になるため、今回のようなデータを得ることはこれまで困難だった。

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