鉄などの重元素、100億年以上前に宇宙に拡散
―X線天文衛星「すざく」による観測で判明
:宇宙航空研究開発機構/米・スタンフォード大学

 (独)宇宙航空研究開発機構(JAXA)は10月31日、米スタンフォード大学とJAXAの研究者たちが、X線天文衛星「すざく」を用いた観測で、100億年以上前の太古に鉄などの重元素が宇宙全体にばらまかれた時代があり、それが現在宇宙に存在するほとんどの重元素の起源であることを確認したと発表した。

 

■「ペルセウス座銀河団」周囲の鉄の分布を調査

 

 「すざく」は2005年7月に打ち上げられた日本で5番目のX線天文衛星で、広い帯域(軟X線からγ線領域)のX線を高い感度で観測でき、分光能力も優れるという特徴を備えている。
 研究チームは、この「すざく」を用いて地球から約2億2200万光年離れた銀河の大集団「ペルセウス座銀河団」の周囲1000万光年にわたる広い範囲の鉄の分布を調査した。その結果、鉄の割合はほぼ一様で、ばらつきが小さいことを発見した。
 もともと鉄などの重元素は137億年前の宇宙誕生時には無く、星の中で合成(恒星の核融合反応で生成)され、その星が超新星爆発を起こして最後に飛び散った際、周辺の宇宙空間に拡散したとされている。
 その星の誕生自体はビッグバンから約30億年後、今から約110億年前で、そのころ星が大量に誕生し、星の大集団、銀河がたくさん生まれたと考えられている。鉄などの重元素が生成されたこの時期、重元素は銀河の中や近くにとどまっていたのか、それとも銀河間空間をはるか遠方にまで大きく広がったのかについては知られていなかった。
 今回の調査で鉄の割合がほぼ一様であったことは、鉄のほとんどは、銀河団が形成された時代より前に、宇宙に大きく広がり、よく混ざっていたと考えられるという。銀河の大集団である銀河団の誕生は今から約100億年前とみられているので、それ以上前に重元素は星々から大量にまき散らされ、銀河からの強い風に乗って宇宙中に拡散した時代があったこと、現在の宇宙に広がるほとんどの重元素はその時代に巻き散らかされたものであることが分かったという。

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宇宙で観測を続けるX線天文衛星「すざく」のイメージ図(提供:JAXA)