（独）産業技術総合研究所などの研究グループは10月29日、従来にない化学的・物理的特性を持つ新材料として注目される筒状の炭素分子「カーボンナノチューブ（CNT）」を安全に取り扱うための測定・試験方法をまとめ、同日付で公開したと発表した。企業など事業者に広く利用してもらい、新材料の応用開発促進に役立てたいとしている。
■今年度中に英語版も
産総研と（独）新エネルギー・産業技術総合開発機構（NEDO）、技術研究組合単層CNT融合新材料研究開発機構の3者による共同研究グループがまとめた。
CNTは直径1～100nm（ナノメートル、1nmは10億分の1m）、長さ1～数μm（ マイクロメートル、1μmは100万分の1m）程度の極微のチューブ状物質。従来にない新材料で、その取り扱いには安全性の確認が欠かせない。
今回まとめたのは、企業などがCNTを扱う際に欠かせない「安全性試験手順書」と「作業環境計測の手引き」の2つ。手順書は、動物実験による安全性評価を試験管内の培養細胞を用いて行う簡易試験法などについて、また手引きは、大気中に飛散したCNTの簡易定量法の有効性などについて説明している。
事業者は、手順書を参考にすれば多様なCNTの安全性を簡易・迅速に評価でき、研究開発を効率よく安全に進められる。また手引きは、各事業者が自主的に安全な作業環境を実現するための環境計測に役立つ。
CNTは鋼鉄をはるかにしのぐ強度や半導体・導電性など多様な特性を持つ新材料として期待されており、用途に応じて化学的・物理的特性を変えたさまざまな素材の開発が進んでいる。そのため個々の材料について動物実験による安全性評価は多大なコストと時間がかかり、現実的でなく大きな課題となっていた。
そこで研究グループは安全性の簡易試験法や作業環境の計測技術の評価などを進めてきたが、今回その成果を手順書と手引きとしてまとめた。産総研のホームページからダウンロードできるが、今後は学会での発表や企業などへの説明会を通じて活用を促す。また英語版を今年度中に公開、国際機関などへの情報提供を進める。
