筑波大学は11月1日、附属病院内に「つくばヒト組織バイオバンクセンター」を設立し事業を開始したと発表した。国内の大学として初めて、ヒトの組織や細胞、DNA(デオキシリボ核酸)などの生体試料を病歴などの臨床情報や遺伝子解析データとともに収集・管理して研究用に提供する。新しい治療技術の確立や新薬開発で信頼性の高い成果を得る研究を支援し、先進医療の促進に役立てる。
■治療や新薬開発研究を支援
手術や検査の際に採取された組織や血液などの試料の多くは診断終了後に廃棄されているのが現状だが、同センターは患者の同意を得たうえでそうした試料を臨床情報などとともに保存・管理する。試料を研究者に提供する際には、研究者からの利用申請に基づき研究課題を審査・承認する。
従来、研究者が試料を得るには提供機関と個別に共同研究契約を結ぶ必要があり、研究成果がだれに帰属するのかといった問題があった。そのため医薬品の開発や治療ガイドラインの決定が迅速に進まず、臨床現場に新薬や新しい治療技術の導入が遅れる一因になっていた。今回は共同研究契約ではなく申請にしたことで、研究者は成果の知的財産権を制限されることなく研究に専念できるようになる。
病気の原因・症状を解明したり新薬を開発したりする基礎研究では、動物実験とともにヒトの生体試料を使う実験が不可欠だ。このためバイオバンクの設置が国内外で進められているが、国内ではヒト試料の収集・管理は行っているものの、外部に試料を提供しているケースはほとんどなかった。特に大学では、提供機関として機能しているバイオバンクは一つもなかった。