ヘリウムイオン顕微鏡の撮像を予測する技術を開発
―ナノデバイスの材料開発に寄与
:産業技術総合研究所/中国・四川大学/スペイン・バスク大学

 (独)産業技術総合研究所は12月21日、中国の四川大学、スペインのバスク大学の研究者らと共同で、ヘリウムイオン顕微鏡(HIM)像を予測する計算技術を開発したと発表した。
 ナノメートルスケール(ナノは10億分の1)のデバイス材料として注目されているグラフェン(炭素原子が平面上に蜂の巣状に結合した層状物質)の観察にこの技術を適用してグラフェンのHIM像をシミュレーションしたところ、高解像度のグラフェン格子像を取得できる可能性が得られたという。ナノデバイス開発の促進が期待できるとしている。
 HIMは、観察する試料にヘリウムイオンビームを走査しながら照射し、放出される電子を捉えて撮像する顕微鏡。電子線を試料に走査しながら照射して撮像する走査型電子顕微鏡よりも鮮明な像が得られるが、HIMによる撮像原理の機構は解明されておらず、解像度をどこまで上げられるかも十分わかっていない。
 研究チームは今回、(独)海洋研究開発機構のスーパーコンピューター「地球シミュレータ」を使い、シミュレーションで電子の動きを直接数値計算する手法をグラフェンで試みた。得られた結果は、ヘリウムイオンのビーム径を小さくすることで高解像度のグラフェン格子像が観察可能になることを示唆していたという。

詳しくはこちら

ヘリウムイオン顕微鏡の概念図(提供:産業技術総合研究所)