筑波大学は12月19日、コウモリ類が鳥の翼ともムササビのそれとも異なるコウモリ特有の翼を獲得した進化の過程について新たな知見を得たと発表した。
飛膜と呼ばれるコウモリの翼の内部に侵入している筋の形成過程を調べたところ、コウモリの翼の筋の形成は飛膜によって誘導され、この筋と飛膜原基の形成に「Fgf10(線維芽細胞増殖因子10)」と呼ばれる遺伝子が関わっている可能性が見えてきたという。
コウモリの翼は、前肢の腕と手の指から後肢の足首と尾にまで広がる飛膜で覆われ、その飛膜とそれを支える骨や筋肉でつくられている。飛膜の内部には筋組織が侵入し、この筋で飛膜をはばたかせ飛翔することが可能になったとされている。腕に羽が生えた鳥類の翼や飛膜で滑空するだけのムササビの翼とは異なっており、コウモリがコウモリ特有の翼を獲得して進化した過程は謎に包まれている。
研究チームは今回、飛膜内部に侵入する筋組織に焦点を当て、筋組織の形成過程を調べた。その結果、翼の筋も一般の筋芽細胞塊から誘導され、この誘導は飛膜の形成に伴って起こることがわかった。また、肢芽形成に関与するシグナル因子の遺伝子であるFgf10の発現領域が、コウモリでは肢芽だけではなく、飛膜が発生する領域まで拡張することで飛膜の形成が促されることが見出された。
今回の研究で飛膜形成へのFgf10シグナルの関与が浮かび上がったことから、今後、因果関係などを解明したいとしている。
No.2012-51
2012年12月17日~2012年12月23日