セシウムの存在位置をミリ以下の精度で可視化
―新しい蛍光材料開発、除染作業の効率化へ
:物質・材料研究機構

 (独)物質・材料研究機構は12月20日、原発事故で大量に飛散した放射性セシウムの汚染分布を可視化することに成功したと発表した。セシウムと結合して緑色に光る新しい蛍光材料を開発したもので、アルコールに混ぜて噴霧し、紫外線を照射するだけで地表などの汚染が1mm以下の精度でわかる。除染作業の効率化や汚染廃棄物の大幅削減、セシウムの拡散・蓄積過程の解明などに役立つと期待している。
 同機構国際ナノアーキテクトニクス研究拠点の森泰蔵博士らの研究グループが開発した。新材料は、3種類の高分子が鎖状につながった構造をしており、セシウムがあるとそれを抱きかかえるようにして結合する。鎖の長さを調整することでセシウムだけが結合し、紫外線照射によって緑色の光を発するようになる。
 実験では、セシウムを含む土壌に新材料を溶かしたアルコールを噴霧し、紫外線を照射した。その結果、汚染個所を目で容易に特定でき、汚染された土壌のみを簡単に除去できることがわかった。セシウムを散布したろ紙による実験では、数mmから数百μm(マイクロメートル、1μmは100万分の1m)の小さなセシウム粒子も視覚的に特定できた。
 汚染拡散の媒体として心配されるスギ花粉など直径40μm以上の粒子であれば同様に可視化できるほか、セシウムを吸収したひまわりの茎の切断面でも可視化できるなど、固体の表面だけでなく、生体での可視化も可能という。
 放射性物質を可視化するカメラの開発はこれまでにも進んでいるが、従来は高価なため広く一般に使うのは難しかった。また、数百mから数mの領域で使うには適しているが、新技術のように数cmから数μmの領域での利用はできなかった。

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土壌中のセシウムを可視化(提供:物質・材料研究機構)