有機材料の「イミダゾール」が強誘電性持つことを発見
―化学的に安定し低コスト、素子への発展期待
:高エネルギー加速器研究機構/東京大学/理化学研究所

 (独)産業技術総合研究所と高エネルギー加速器研究機構は12月19日、生体物質の一種「イミダゾール」が強誘電性を持つことを発見したと発表した。
 強誘電性は、電荷の偏り(電気分極)が電圧の向きに応じて変わり、電圧をゼロにしても保たれる性質のこと。この性質を利用した強誘電体不揮発性メモリーは、電源を切っても記憶内容が消えず、高速書き換えが可能なことから「究極の省エネメモリー」としてICカードへの搭載など急速に普及が進んでいる。
 しかし、現在使われている強誘電体のジルコン酸チタン酸鉛類は、毒性の強い鉛を高濃度で含むことから安全性の面で問題ありとして早期の代替が求められている。
 今回の研究は、(独)科学技術振興機構(JST)の課題達成型基礎研究の一環として産業技術総合研究所、高エネ研、東京大学、(独)理化学研究所の研究陣によって行われたもので、イミダゾールを使った有機材料製強誘電体素子への発展が期待される。
 有機材料は、有害元素やレアメタル(希少金属)を含まず、軽くて形を自由に変えられるといった特徴を持ち、これまでにクロコン酸と呼ばれる有機の強誘電体が見つかっており、無機の代表的強誘電体の一つチタン酸バリウムに匹敵する特性を持つことが確認されている。
 しかし、クロコン酸は、化学的安定性や有機溶剤への溶解性などに課題を残している。
 それに対し、ビタミンB12などに含まれる生体物質のイミダゾールは、化学的に安定で溶解性も優れている。
 しかも、イミダゾールは、生体物質でありながら化学的に合成されたのが1858年と早く、現在ではアンモニアとホルムアルデヒドから量産され、抗潰瘍剤などの医薬品や農薬などに広く使われており、「クロコン酸の100分の1程度の価格で入手できる」ものと関係者はみている。

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