(独)農業・食品産業技術総合研究機構の果樹研究所は12月21日、温州ミカンを多く摂取する閉経後の女性は、骨粗しょう症になりにくいことが栄養疫学調査で分かったと発表した。温州ミカンに多く含まれているカロテノイド色素「β‐クリプトキサンチン」の血中濃度が高い閉経後の女性は、濃度が低い女性に比べて約9割も発症リスクが低かったという。骨粗しょう症の予防は、将来的に要介護のリスクを減らすことにもつながることから、この研究成果は、注目される。
これは、同研究所や浜松医科大学、浜松市との共同研究によるもので、浜松市北区三ヶ日地域の住民457人を対象に4年間の追跡調査を行った。
調査では、骨が健康な閉経後の女性を対象に、血中のβ‐クリプトキサンチン濃度の低いグループから高いグループまで3グループに分けてそれぞれの骨粗しょう症の発症率を調べた。その結果、β‐クリプトキサンチンが低濃度のグループの発症リスクを1とすると、高濃度のグループの発症リスクは、0.08と、低いことが分かった。また、4年間の追跡調査で、4年間に骨密度が低下した人ほど調査開始時の血中のβ‐クリプトキサンチン濃度が低いことも分かった。
今回の調査では、抗酸化物質であるカロテノイド類6種(リコペン、α‐カロテン、β‐カロテン、β‐クリプトキサンチン、ルテイン、ゼアキサンチン)のうち、骨粗しょう症の発症リスク低減と関連が見られたのは、β‐クリプトキサンチンだけだったという。
一方、男性や閉経前の女性では、こうした関連は見られなかった。
研究グループは、こうした結果を踏まえて、今後は温州ミカンやβ‐クリプトキサンチンの骨代謝に及ぼす作用や、そのメカニズムについて明らかにしたいとしている。
No.2012-51
2012年12月17日~2012年12 月23 日