筑波大学は10月6日、走査型トンネル顕微鏡(STM)の技術を用いて分子構造の変化が、分子の電流の流れやすさなど電気的特性に与える影響を測定し、画像化する技術を開発、この技術により、有機分子を伸縮させることで電流を急激に増、減できることを精密に測定し、ナノスケールの分子スイッチとして働かせることを確認したと発表した。半導体材料のシリコンと有機分子スイッチとの組み合わせによって、これまでにない分子電子材料の開発に弾みがつくとみている。
■走査トンネル顕微鏡の技術を駆使
この実験のカギになるのが走査型トンネル顕微鏡という原子レベルの測定装置。細い金属針を1nm(ナノメートル、1nmは10億分の1m)程度まで材料に近接させると、非接触でも突然トンネル電流が流れる。材料表面に沿って動かし、このトンネル電流の測定によって、表面の原子レベルの凹凸形状が分かる。
有機分子を金属材料に直接つなぐことは難しい。そこで有機分子の片方をシリコン基盤につなげ、もう一端は、STMの金属針をシリコン針に変えて電極とし近接させてトンネル電流が流れるようにした。つまり半導体材料のシリコンと、STMのシリコン針の間に有機分子(「1、4—ジエチレンベンゼン」や「1、4—ジビニールベンゼン」)を挟むことで、安定して精密に扱うことができる。
長さ1nmの極微小な有機分子の両端をシリコン電極で挟み、分子を1%程度引っ張ると電流が減り、逆に戻すと電流が増える。繰り返し操作にも安定した分子スイッチが実現した。新たな機能素子としての活用を探っている。