世界初、非晶質ニッケルナノ粒子の合成に成功
―触媒作用を用いて炭素‐炭素結合形成反応を実現
:産業技術総合研究所/大阪大学(2015年10月5日発表)

 (国)産業技術総合研究所と大阪大学の共同研究グループは10月5日、世界で初めて非晶質のニッケルナノ粒子を合成し、この粒子の触媒作用を用いて炭素‐炭素結合形成反応を実現したと発表した。開発した非晶質ナノ粒子は、高価なパラジウムや白金などの貴金属ナノ粒子よりも活性が高く、しかも材料のニッケルは安価で入手も容易であり、有機化合物合成の低価格化などが期待できるという。

 

■安価でパラジウム、白金凌ぐ触媒活性

 

 有機化合物のほとんどに含まれる炭素‐炭素(C-C)結合を自在に作り上げることは有機合成化学の重要課題の一つで、新たな反応の開発に世界の化学者がしのぎを削っている。2010年にノーベル賞を受賞した鈴木章、根岸英一博士らの研究成果はその例。

 この有機合成では近年、金属ナノ粒子を触媒として利用する研究が進み、パラジウムなどの貴金属のナノ粒子がC-C結合形成反応の触媒として非常に有用なことが明らかになってきた。ただ、実用化には低コスト化が望まれることから、貴金属を卑金属に置き換えることが試みられているが、これまでのものは触媒活性が極めて低く、また製造面で実用性に欠けていた。

 研究グループは今回、高い還元能力を持つ有機ケイ素化合物をニッケルアセチルアセトナートに作用させることにより、最大直径15nm(ナノメートル、1nmは10億分の1m)の非晶質ニッケルナノ粒子を作り出すことに成功した。結晶性のニッケルナノ粒子の形成はこれまでも知られているが、触媒活性が大きく異なる非晶質ナノ粒子の形成は世界で初めて。

 この粒子を使ってC-C結合を持つビアリール、ジアリールメタノールを合成し触媒活性を確認。また、C-C結合形成反応においてパラジウムや白金などの貴金属ナノ粒子を凌駕する触媒活性をニッケルナノ粒子に認めた。さらに、非晶質ニッケルナノ粒子には活性の高いニッケル原子の放出と貯蔵を自由自在に繰り返すタンクのような役割があることも見出した。

 今回の研究開発によりC-C結合形成反応の低コストに道が開けたという。

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炭素‐炭素結合形成反応における非晶質ニッケルナノ粒子の触媒としての利用と、その触媒活性の比較。パラジウムや白金より高活性なことが分かる(提供:(国)産業技術総合研究所)