(独)土木研究所と(株)富士通研究所は3月9日、洪水予測の際に河川の流量を計算する洪水予測シミュレーターのパラメーター値を自動的に決定する技術を開発したと発表した。シミュレーターを常に最適な設定に調整して運用できるため、防災・減災のためにとるべき対策を適切に判断できるという。
■過去の洪水と比較、高い再現性を確認
台風や大雨の際には河川の流量を予測して対策が取られるが、集中豪雨など自然災害の大規模化に伴い水害対策はさらなる高度化が求められている。
その手段となる洪水予測シミュレーターでは、河川流域の地形や、森林・市街地といった土地利用の分布をモデル化した分布型流出モデルの利用が有効だが、過去の洪水に関するモデルのパラメーターを適切に調整するには専門的な知識と高度なスキルが必要で、それが分布型流出モデルの利用促進の支障になっていた。
共同研究チームは今回、75種類のアルゴリズムを評価して分布型流出モデルに適した13種類の最適化アルゴリズムを選定、併せて選定を自動化する数理最適化プラットフォームを開発した。
過去に起きた15種類の洪水について実際の流量測定値とシミュレーションによる計算値とを比較したところ、再現性の高さを確認できたという。
今後さまざまな洪水における検証を通して予測精度を向上させ、2016年度に実用化させたいとしている。

グラフは、河川の流量の測定値とシミュレーションによる計算値(提供:(株)富士通研究所)