(独)産業技術総合研究所は2月25日、導電性繊維を用いて高伸縮性・高耐久性の導電配線を開発したと発表した。医療・ヘルスケアデバイスや高伸縮性ウェアラブルデバイスの開発に役立つという。
■ウェアラブルデバイス開発などに貢献
人体に装着するウェアラブルデバイスは人体の曲面にフィットさせて用いるため、高い伸縮性とともに屈曲・伸縮の繰り返しに対する耐久性が要求される。これまでの伸縮性配線は伸長すると抵抗値が大きく変化したり、繰り返し折り曲げると断線したりした。
研究グループは、ポリエステルなどの化学繊維に金や銅などを被覆した導電性繊維を用い、高伸縮性の樹脂シートの上に、この導電性繊維をバネ状に形成して、高伸縮性の導電配線を作製した。
この配線は、3倍以上伸長(伸長率200%以上)しても、20万回以上折り曲げても(曲げ半径0.1mm以下)、抵抗値変化は1.2倍程度にとどまり、安定な電気特性を示した。
また、一般に伸縮性配線を伸長・収縮させると、変化した抵抗値が安定するまでに時間を要する、いわゆる電気抵抗の緩和現象が生じるが、開発した導電配線は安定するまでの時間が短く、センサーなどの信号配線として利用できることを確認した。
研究グループはさらに、この高伸縮性導電配線を用いて、圧力センサーを多数マトリックス状に形成した圧力センサーシートを作製した。圧力センサーは導電性の短繊維を高い配向性を持たせてパターニングした高伸縮性短繊維配向型電極から成り、開発したセンサーシートは、伸ばしても折り曲げても壊れにくい高い耐久性と、人体表面への高いフィット性が認められたという。
これらの成果は快適性、信頼性の高いウェアラブルデバイスや心拍・血流センサーなどの医療・ヘルスケアデバイスの開発に役立つとしている。

短繊維配向型電極。左は、 高伸縮性短繊維配向型電極にLEDを接続し2倍に伸長した時の様子、右は、 高伸縮性樹脂シート上に配向した導電性短繊維の顕微鏡写真(提供:(独)産業技術総合研究所)