
実験終了後の試験体の状況。1階の柱が折れている(提供:(独)防災科学技術研究所)
(独)防災科学技術研究所、京都大学などの研究グループは2月23日、総重量320t、6階建ての鉄筋コンクリート造りのビルが強い地震で倒壊状態に達するまでの様子を再現した実験結果を発表した。現行の耐震基準で設計されたビルは十分に安全が保たれる一方、繰り返し地震の被害を受けると破壊が徐々に広がり倒壊につながることなどを確認した。ビルの設計や安全性評価、被災ビルの健全度評価などに役立つと期待している。
■E-ディフェンス使い実験
防災科研が京大のほか大林組、清水建設と共同で、実大三次元震動破壊実験施設(E-ディフェンス)で1月20日から3日間かけて実験した。縦15m、横20mの大型震動台に6階建てのビルを30%に縮小した形で載せ、阪神淡路大震災のときに神戸海洋気象台などが観測した地震波をもとに揺れを再現した。
初めに、ビルの基本特性やコンクリートのひび割れ状況を確認するために、神戸海洋気象台の地震波形で震度4相当の地震動を再現。その後に建築基準法で必要とされているビルの強度などを確認するために段階的に震度7相当になるまで地震動を強くした。
その結果、現行の耐震基準を満たしていれば、建築基準法が定める地震の揺れによる水平方向の力に十分耐える強度があり、ビルは継続使用できることが確認できた。また、揺れが1.3倍の地震を複数回受けても耐力劣化はなく、倒壊までに余裕があることも分かった。
神戸海洋気象台の地震波形の120%の強度で揺らし、ビルが最大どれだけ水平方向の耐力を持つかを調べた実験では、建築基準法が定める耐力の約2倍だった。同じく、140%の強度、震度にして7で揺らしたところ、ビルの1、2階の損傷と変形が著しく進行し、構造的な安全限界に達することがわかった。
この後に、阪神淡路大震災でも特に被害が大きかったJR鷹取駅で観測された地震波形を使い、その140%の強度、深度7で揺らした。その結果、バルコニーが実験の安全を保つための防護フレームに衝突するなどしたため、ビルは倒壊状態に達したと判断した。
今後、得られたデータを詳細に分析、地震によるビルの揺れや破壊の進行などについてシミュレーション解析を進めれば、都市の基盤となっている鉄筋コンクリート造りのビルの安全性確保に役立てられるという。