(独)日本原子力研究開発機構と(独)農業・食品産業技術総合研究機構の花き研究所は2月26日、花や果実などの色素「アントシアニン」を作り出している酵素の立体構造を明らかにしたと発表した。新しい花の色の作出などにつながる成果という。
■新しい色の花作出など応用へ
アントシアニンは、赤~紫~青色を呈する植物の色素で、原料のアントシアニジンに糖や糖鎖が様々なパターンで結び付いた分子(配糖体成分)を指す。鮮やかなブルーの花をつけるチョウマメ(蝶豆)の花弁には、「Ct3GT-A」と名付けられた酵素があり、この酵素がアントシアニジンと結合してアントシアニジンの分子に糖を付加し、青色のアントシアニン色素を作り出していることが知られている。
しかし、アントシアニジンは水溶液中で不安定で分解してしまうことから、これまでアントシアニジンと酵素が結合した様子は明らかでなかった。
研究チームは今回、アントシアニジンの分解を弱酸性の条件下で抑制し、「Ct3GT-A」酵素と結合した状態を維持させることに成功した。
これを、高エネルギー加速器研究機構(KEK)のフォトンファクトリーと、兵庫県にある大型放射光施設「Spring-8」の放射光ビームを用いて観察し、「Ct3GT-A」酵素の立体構造と、アントシアニジンが酵素と結合した様子をX線構造解析することに世界で初めて成功した。その結合様式から、発色の異なる色素原料を識別する分子メカニズムが明らかになったという。
今回得られた立体構造情報を用いて組み換えタンパク質を作製すると、市場価値の高い花色を生み出したり、医薬品の候補物質を作ったりするなどの応用が期待されるという。