(独)物質・材料研究機構は10月2日、NMR(核磁気共鳴)用の磁石としては世界最高記録となる磁場を発生させることに成功したと発表した。
同機構を中心とする(独)理化学研究所、(株)神戸製鋼所、(株)ジオル・レゾナンスからなる研究チームが、世界最高磁場のNMRシステム向けに作ったビスマス系の高温超電導線使用の超電導磁石で10月1日、1,001MHz(メガヘルツ、1MHzは100万Hz)、23.5テスラ(1テスラは1万ガウス)の磁場を発生させたもの。
NMRは、有機化合物の分子構造決定に広く使われ、これまでのNMR磁石の世界最高磁場強度はドイツが2009年に達成した1,000MHz(メガヘルツ)、23.5テスラだった。
物材機構を中心とする研究チームは、(独)科学技術振興機構(JST)の「先端計測分析技術・機器開発」プログラムのもと、ドイツを上回る1GHz(ギガヘルツ、1Gは1,000メガ)超の磁石を目指す「超1GヘルツNMRシステムの開発」に取り組んでいる。これまでNMR磁石には使用が困難とされてきた酸化物系高温超電導線材の使用を可能にして今回の磁場強度を実現。ビスマス系高温超電導線を用いることによって従来技術の限界だった1,000MHzを超える磁場を発生させることが可能になったという。
このNMR用超電導磁石の開発は、2006年度から進めてきたもので、東日本大震災による損傷とその後の2年にわたる大修理などがあって遅れていたが、設計上の限界値である1,030MHz、24.2テスラを目指してさらに磁場を上げる作業を進めるとしている。