(独)産業技術総合研究所は9月30日、ポリウレタン原料の新合成法を開発したと発表した。新合成法を使えば、有毒物質を全く用いないでそのポリウレタンを合成できることから、「ポリウレタン製造プロセスの革新につながる」として同研究所は早期の実用化を目指すことにしている。
■副生成物は水だけ
ポリウレタンは、クッション、マットレスといった身近な生活用品や、塗料、建設資材、自動車部品などに広く使われている高分子材料。全世界の年間生産量は、1,900万t(2013年)に達する。
現在、ポリウレタンの製造には、猛毒で腐食性の強い塩素化合物「ホスゲン」が使われている。
産総研は、ポリウレタンの元となる「芳香族ウレタン」と呼ばれる化合物を安価な原料から高収率で合成することに成功し、“ノン・ホスゲン”のポリウレタン製造に道を開いたもの。
芳香族ウレタンの合成原料は、炭酸ガス(二酸化炭素)、芳香族アミンと、スズアルコキシド化合物と呼ばれるスズとアルコールの化合物で、産総研は反応温度150℃、反応時間20分で副生成物の発生をわずか1%に抑えながら目的の芳香族ウレタンを82%という高い収率で合成している。
芳香族ウレタンの合成では、スズアルコキシド化合物を芳香族アミンの量以上消費するが、スズ分は残留物となって回収でき、回収したスズ残留物にアルコールを反応させれば元のスズアルコキシド化合物が再生して繰り返し循環使用できる。反応で副生するのが水だけというのも大きな特徴という。

従来のポリウレタン製造法と今回開発した芳香族ウレタン合成法(提供:産業技術総合研究所)