筑波大学と(独)産業技術総合研究所、大阪大学、(独)科学技術振興機構は10月1日、硫酸性の温泉に生息する藻が、金属廃液に含まれる微量のレアアース(希土類元素)を効率良く回収することを見出したと発表した。先端産業に欠かせない稀少で高価なレアアースのリサイクル技術開発が期待できるという。
■金属廃液からのリサイクル技術開発に期待
レアアースの高効率回収が発見されたのは、草津温泉(群馬県)や登別温泉(北海道)などの硫酸性温泉にすむ和名「イデユコゴメ」という藻類の仲間の紅藻。研究チームは、この硫酸性温泉紅藻が低濃度の銅を高い効率で回収する作用を持つという報告事例に着目し、今回、レアアース回収への適用を試みた。
実験では、ハイブリッド自動車のモーターなどに使われているレアアースのネオジム、ディスプロシウムをはじめとして、銅、鉄、コバルト、ニッケルなど計10種類の金属を低濃度(各5ppm)で含む酸性溶液をつくり、藻の培養条件をいろいろ変えて、ネオジムとディスプロシウムの回収効率を調べた。
その結果、窒素ガス100%を通気し、暗所で有機物のみで培養するという条件下では、ネオジム、ディスプロシウム、それと銅が約70%の高効率で回収された。
次に、レアアースのランタンを含むネオジム、ディスプロシウム、銅の4種を酸性溶液に溶かし、同じ条件下で培養したところ、濃度がそれぞれ0.5~5ppmという非常に低い値ではレアアース、銅とも回収効率が80~100%にのぼった。また、同じ条件下で、pHを2.5から1.0に下げた(酸性度を高めた)ところ、レアアースだけを選択的に回収できることが分かったという。
さらに研究チームは、回収メカニズムの解明を目指して元素の蓄積状態を顕微鏡で調べた。それによると、まだメカニズムは不明だが、微生物の細胞表面の負電荷に正電荷の金属が吸着する、いわゆるバイオソープション(生物吸着)とは異なる原理が働いていることがつかめたという。
研究チームはこれらの結果から、酸性の金属廃液中の低濃度レアアースを高効率で回収する新しい技術の開発が期待できるとしている。