筑波大学は9月30日、ナトリウムイオン電池の正極材料の起電圧をイオンモデルによって説明することに成功したと発表した。簡単な計算で正極材料の電位を予測できるため、電池材料開発の迅速化が期待できるという。
■電池材料の開発迅速化へ
ナトリウムイオン電池は、資源問題が懸念されているリチウムイオン電池の代替として注目されている、いわゆるポスト・リチウム電池で、再生可能エネルギーを蓄える大規模蓄電池としての開発がとりわけ期待されている。
ただ、典型的な正極材料である遷移金属酸化物のナトリウム鉄酸化物の電位は3.3Vと、リチウムイオン電池の正極材料であるリチウムコバルト酸化物に比べて約0.6V低く、電位の増大が望まれている。しかし、電位を高めるための有力な材料設計指針はこれまでなかった。
研究チームが今回電位予測に用いたイオンモデルは、構成元素のイオンの性質であるイオン化エネルギーや電子親和力、それと静電エネルギーとから、その物質の性質を予測するという手法で、超電導や強磁性を示す物質などでは利用されてきたが、電池材料には応用された例がなかった。
今回それを試みたところ、正極材料の構成金属である遷移金属と電位との関係を明らかにでき、またイオンモデルによる電位の計算値と実験値がよく合致することをつかんだ。
今後イオンモデルを用いて物質設計を行えば、高い電位を持つナトリウムイオン電池材料の開発が期待できるとしている。