(独)国立環境研究所と環境省、(独)宇宙航空研究開発機構(JAXA)は3月27日、温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)による観測データを用いた地球全体のメタン収支の推定結果を発表した。メタン放出が多い地域が東南アジアや南米など人口密度の高い地域と一致することや、地上の観測データを用いる従来法より推定精度が向上することなどが確認できた。地球温暖化の解明や予測に大きく役立つと期待される。
■高人口密度地域ほど放出量大
「いぶき」は、地球温暖化の原因とされる二酸化炭素(CO2)やメタンの濃度を宇宙から観測することを主な目的に、環境省など3機関が2009年に共同で打ち上げた世界初の温室効果ガス観測専用の衛星。
地球を回りながら、地表で反射した太陽光の赤外線を衛星のセンサーでとらえて、大気中を通過するときに赤外線が受ける変化から温室効果ガス濃度の分布を測定する。打ち上げから2011年までの2年間に収集した観測データを利用して、メタン収支を推定した。
その結果、①メタン濃度は1年を通じて南半球より北半球の方が高く、その濃度は季節や場所によっても異なる、②百数十点ある地上観測点のデータと合わせることで、地球を43地域に分割した地域別・月別のメタン収支が得られる、③地球全体でみるとメタン放出量が多い地域は人口密度の高い地域とほぼ一致し、東南アジアや南米、アフリカの南亜熱帯地域で特に多い―ことなどがわかった。
このほか、東南アジアや南米、アフリカの南亜熱帯地域では、従来の地上観測データによる推計に比べて、「いぶき」の観測データも使った推計の方がメタンの年間放出量が多くなることも明らかになった。このため3機関は、「いぶき」による衛星観測が「地上観測ネットワークの空白域を埋めることで、メタン収支にかかわる新たな情報を与える可能性があることが示された」としている。
今後、メタン放出に関する陸域の生態系データベースの改善につながるなどの効果も期待できるとして、内容の評価・確認をしたうえで、今年夏までに推定結果を一般公開する。