(独)物質・材料研究機構と東京大学、京都大学の研究チームは3月24日、リチウムイオン電池の急速充電、高電圧作動を可能にする新電解液を開発したと発表した。この電解液を用いると充電時間を従来の3分の1以下に短縮でき、電気自動車への利用に耐える5V級の高電圧作動電池の実現も見込めるという。
■通説覆し多様な電解液設計が可能に
リチウムイオン電池は、現在最も広く利用されている二次電池で、リチウムイオンが電解液を介して正負の電極間を移動することで充放電を行う。電解液にはこれまで有機溶媒をベースとする有機電解液が主に用いられている。
開発した新電解液は、従来の4倍以上の超高濃度のリチウムイオンを含む“濃い液体”。
高速反応性と、高い電圧をかけても分解しないという高い分解耐性を持つ。
研究チームは、“濃い液体”とすることで、従来必須であった有機溶媒の一種、エチレンカーボネートを溶媒として使用しなくても電解液として作動することを見出した。その結果、多様な電解液設計が可能となり、この特徴に着目して材料を探索したところ、従来の電解液の性能を大きく超える新物質を発見、「高濃度では反応が遅く電解液には適さない」というこれまでの通説を覆す、優れた機能を備えた“濃い液体”を得た。
スーパーコンピューターを用いたシミュレーションで、この電解液の新機能は、特殊な溶液構造によることが明らかになったという。新電解液を用いると現在の3.7Vを超え、5V級の高電圧作動が期待でき、電気自動車やスマートグリッドなどへのリチウムイオン電池の利用が見込めるとしている。