金を含む新たな超電導体「SrAuSi3」を創出
―「空間反転対称性が破れた超伝導」解明へ前進
:物質・材料研究機構

 (独)物質・材料研究機構は3月25日、金(Au)を主要元素として含むストロンチウム(Sr)、金、ケイ素(Si)から成る超電導体「SrAuSi3」を合成したと発表した。「空間反転対称性の破れた超伝導」と呼ばれる新しいタイプの超電導体の一つで、超高圧発生装置を使って作り出した。新たな超電導メカニズムの解明につながる成果という。

 

■6万気圧、1,500℃の超高圧・高温下で反応

 

 物質の電気抵抗がゼロになり、電流が流れ続ける超電導現象は、2つの電子が対(クーパー対)を形成することで起こるとする「BCS理論」によって説明される。
 このクーパー対の形成については、対称性の高い空間においてのみ実現される、というのがこれまでの常識だったが、近年これに反し、対称性の低い空間でも超電導が現れることが見出された。これを「空間反転対称性が破れた超伝導」といい、異常な電子状態の発現が予想されている。
 今回研究チームは、この新たなタイプの超電導現象を探るため、超高圧発生装置を使って結晶構造に反転対称性がない新物質の合成を試みた。その結果、金、ケイ素、珪化ストロンチウムを6万気圧、1,500℃の超高圧・高温下で化学反応させることにより、従来には無い新しい化合物SrAuSi3の合成に成功した。
 調査の結果、金とケイ素の化合物としては初めての超電導体であり、絶対温度1.6度(-271.55℃)で超電導を認めた。この新物質は遷移金属元素(M)を主要元素として含む「AMX3型構造」と呼ばれる一連の化合物群に属する。
 新物質の電子構造を理論計算解析したところ、原子番号の大きな金を含むことにより電子数の増加に加え、従来の同型物質とはかなり異なる電子構造が明らかになったという。今後、さらに詳しく物性を調べれば、「空間反転対称性の破れた超伝導」のメカニズムが解明され、磁場に強い新超電導材料の開発などにつながることが期待されるとしている。

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図

(a)は、SrAuSi3の結晶構造、(b)は、走査透過型電子顕微鏡の格子像(提供:物質・材料研究機構)