(独)物質・材料研究機構は3月26日、ハイブリッド自動車のモーターなどに使われている高温用のネオジム磁石を、レアメタル(希少金属)のジスプロシウムを用いずに作製したと発表した。耐熱性の指標である保磁力を今後一層高めて実用化させたいとしている。
■保磁力高めて実用化目指す
ネオジム磁石は各種家電製品や医療機器、産業用機械などに幅広く利用されている磁石で、最近ではレアメタルを混ぜて高温性能を高めたネオジム磁石がハイブリッド自動車のモーターなどに使われるようになり、急速に消費量を拡大している。
ただ、ジスプロシウムは産地が偏在し、資源リスクが大きいことから、物材機構の研究チームは、ジスプロシウムを使用しない高温用ネオジム磁石の研究開発を推進、今回、これを一切使用しないで高温用ネオジム磁石を作り出す方法を見出した。
開発した製法は、熱間プレスと熱間押し出しによって作られた熱間加工ネオジム磁石を利用する。この磁石は結晶粒が小さく、現在の焼結磁石よりも高い磁気特性を持つ。大同特殊鋼(株)からこの提供を受け、これにネオジムと銅の合金を浸透させ、結晶と結晶の境界の結晶粒界に非磁性のネオジム銅合金層を形成した。このままでは体積が増えて磁化が希釈されるため、治具を用いて体積膨張を抑え、「膨張拘束拡散処理された熱間加工磁石」を得た。
実験の結果、電気自動車や風力発電などで要求される200℃の下で、磁石の性能を示す最大エネルギー積は、ジスプロシウムを8%含む現行の高性能焼結磁石を上回っていた。しかし、耐久性の指標である保磁力は不足していた。このため、今後保磁力を一層高める工夫をし、ジスプロシウムフリー化を実現させたいとしている。