(独)産業技術総合研究所は3月18日、高効率太陽電池として期待される化合物半導体を用いた太陽電池パネルの劣化防止技術を開発したと発表した。太陽電池を並べてパネル化する際に必要な封止材として、ゴルフボールなどに使われる高分子材料が極めて有効なことを確認した。今後、新材料による劣化防止メカニズムをより詳細に解明する。
■劣化原因のナトリウムイオンなどの拡散防ぐ
開発したのは、銅、インジウム、ガリウム、セレンからなる化合物半導体を用いたCIGS太陽電池の新しい封止材。太陽電池は素子をいくつも接続して大きなパネル状にしたモジュールにして使うが、封止材はパネル表面保護のためのガラス板と太陽電池の間に入れるフィルム状の材料。
新封止材は、食品包装材などにも広く用いられている「アイオノマー」と呼ばれる高分子材料。実験では、CIGS太陽電池パネルに新材料と、従来のEVA(エチレンと酢酸ビニルの共重合体)を使った場合とで、モジュールの発電能力がどう変わるかを比較した。
モジュールに高温、高湿度のもとで高電圧をかけるなど、過酷な条件下で劣化を起こさせる試験を実施したところ、太陽光を電気に変える変換効率が従来材料では14日後に30%にまで低下した。
一方、新材料では28日経っても劣化はまったく起きなかった。
高温、高湿度などの条件下では、太陽電池モジュールに高電圧がかかり、出力が大幅に低下するPIDと呼ばれる劣化現象が問題となっていた。今回の試験はこのPIDを人為的に起こしたものだが、新材料を使えばPID劣化が防げることが確認できた。
従来の封止材を使用した場合でも、CIGS太陽電池はシリコン太陽電池に比べてPID劣化は大幅に小さくできる。ただ、CIGS太陽電池に新材料を組み合わせることで、その劣化がさらに大幅に抑えられたわけだ。
PID劣化は、パネル表面のガラスからナトリウムイオンなどが拡散して起きることが知られている。今回の劣化防止効果について、研究グループは「アイオノマーが拡散を抑制したため」とみている。

左は、CIGS太陽電池モジュールの外観(12cm×12cm)、右は、PID試験による各種太陽電池モジュールの出力相対値の変化(提供:産業技術総合研究所)