半導体型のCNTを選択的に合成する技術を開発
―選択率向上で薄膜トランジスタの特性も向上
:産業技術総合研究所

 (独)産業技術総合研究所は2月12日、次世代のトランジスタ材料として期待されている半導体型単層カーボンナノチューブ(CNT)を選択的に合成できる技術を開発したと発表した。現在の合成法では半導体型と金属型が混ざってできるため、合成後にこれらを分けて半導体型を取り出しているが、新技術は半導体型だけを最大98%の選択率で合成できる。選択率が高まったことで薄膜トランジスタの特性も向上したという。

 

■金属触媒微粒子に着目、高い選択率に

 

 CNTは炭素原子でできた直径がナノメートルオーダーの円筒状物質。円筒が一層のものを単層カーボンナノチューブという。
 現在は主に、金属触媒を用い化学気相堆積(CVD)法で成長させて作っている。この合成法では、成長するCNTにわずかな構造的な違いが生じ、それによって電気特性が金属的なものと半導体的なものができる。
 研究チームは今回、この構造との関係が強い金属触媒微粒子に着目し、CNTの成長前に金属触媒の状態を水蒸気で調整する方法を考案した。水分と水素の混合ガスから成る水蒸気を最適化したところ、高い選択率で半導体型の単層CNTを合成できたという。
 合成されたCNTの薄膜をチャネル層として用いて電界効果トランジスタを試作したところ、半導体型単層CNTの選択率が高くなるほどトランジスタの特性が向上することが認められたという。
 従来の分離技術と今回の選択的合成技術を組み合わせれば選択率をさらに高められる可能性があり、単層CNTトランジスタの開発の加速が期待できるとしている。

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