筑波大学と(独)物質・材料研究機構、(独)新エネルギー・産業技術総合開発機構は2月10日、有機薄膜太陽電池に用いる高分子材料の新合成法を開発したと発表した。高純度の材料を安価に効率よく作り出せる。材料の高純度化により、有機薄膜太陽電池の光電変換効率向上や長寿命化が図られることが分かった。
■光電変換効率の向上や長寿命化も
有機薄膜太陽電池は、半導体の性質を持つ「π共役高分子」などからなる有機材料製の太陽電池。軽量、フレキシブルで低コストという特長がある半面、現行の無機材料製の太陽電池に比べると光電変換効率や耐久性に劣っており、その改善が課題とされている。
研究チームは今回、変換効率の向上や低コスト化などにつながるπ共役高分子の合成法を開発した。π共役高分子は主にクロスカップリング反応という方法を利用して合成されるが、この反応ではスズやホウ素、リンなどの化合物を用いるため、これらに関連した副生成物を反応後に除去する必要があった。
開発したのは、効率の良い新たなカップリング反応を利用する手法で、スズやホウ素、リンなどを必要としない。このため副生成物が残存する懸念はなく、精製プロセスは簡略化され、低コストで純度の高い化合物が得られるという。
新合成法で作製した高純度高分子を太陽電池に実装し試験したところ、4%の光電変換効率が得られた。今後さらに高純度材料を用いることで光電変換効率の向上と長寿命化などが図られ、さらに、大量生産にも適した合成法であることから、新たな製造技術としての活用も期待できるとしている。