
上は、 植物体への超音波処理方法の一例。下は、超音波処理によるトマト萎凋病の防除効果(提供:農業・食品産業技術総合研究機構)
(独)農業・食品産業技術総合研究機構と東京農工大学は2月12日、超音波をイネやトマトの苗に照射して病害を防ぐ技術を開発したと発表した。農薬を使わずに病害が防げるため、食の安全・安心の確保や環境への負担低減につながると期待している。イチゴなど他の作物の病害防除効果も確認しており、実用化を目指す。
■発病、イネで2分の1、トマトは3分の1に
同機構の生物系特定産業技術研究支援センター生産システム研究部の吉田隆延主任研究員らの研究グループは、電圧をかけることで超音波を出すセラミック型発振子を利用して周波数40khz(キロヘルツ)、音圧120db(デシベル)の超音波を断続的に出せる超音波発振装置を開発した。
この装置を利用して、イネの苗に2週間連続して超音波を照射、その後にイネいもち病菌を接種した。一定期間が経ってからいもち病にかかったイネにできる病斑の数を数えたところ、超音波を照射せずに菌を接種したイネに比べ、病斑の数が2分の1程度に抑えられた。
また、トマトの葉がしおれて枯れてしまう病気「萎凋病(フザリウム病)」について同様の実験をした。イネと同様、トマトの苗に2週間超音波を照射した後、菌を接種して病気がどの程度抑制できるかを、超音波を照射しない苗と比較した。その結果、超音波照射によって病害の程度が3分の1程度に抑えられることを確認した。
食の安全・安心の確保などの観点から農薬の使用量を減らすことが大きな課題になっているが、これまでは胞子が空気中を飛んで感染するイネいもち病や、土壌中の菌で感染するトマトのフザリウム病などは殺菌剤や土壌消毒剤を使わないと防除が困難とされていた。
研究グループは、「超音波が有効な病害の種類を拡大できる可能性がある」とみており、様々な病気の防除効果試験と実用化に向けた装置の改良を進める。