(独)国立環境研究所と気象庁気象研究所は1月21日、カナダ・ヨーク大学と共同で成田市の上空10kmまでの二酸化炭素(CO2)濃度の変動が日本や東アジア地域一帯のCO2の排出・吸収状況に強く影響されていることを突き止めたと発表した。この成果を利用することで、大気中のCO2濃度の変動から東アジア一帯の周辺地域のCO2排出源や吸収源の分布を推定することなどが可能になると期待している。
研究グループは、日本航空の協力を得て5機の航空機に測定器を搭載し、2005年から2009年にかけて成田上空で大気中のCO2濃度を調べた。これらのデータをもとに数日から1週間程度という短い周期で変動する成分を取り出し、上空10kmまでの高度別に分析した。
一方で、大気中の微量成分がどのように移動・拡散するかを、気象データなどをもとに計算する「全球大気輸送モデル」を用いて成田上空のCO2濃度変動を調べ、航空機による実測データと比較した。その結果、短い周期で変動する成分については、CO2濃度の季節変動や高度分布が計算結果と実測データでよく一致していることがわかった。
そこで研究グループは、成田周辺地域を日本、東アジア、東南アジア、ロシア東部、ヒマラヤ、インドの6地域に分け、成田上空のCO2変動がどの地域の放出源や吸収源の影響を強く受けているかを逆算した。
その結果、上空2km程度までの大気境界層では日本国内の影響を強く受けるが、それより上空10kmまでの自由対流圏では1年を通じて東アジアのCO2放出・吸収に強い影響を受けていることがわかった。特に上空8~10kmの上部対流圏では、春に偏西風に乗って汚染大気が東アジアから吹き付けている様子がとらえられたという。
これらの結果から、研究グループは「CO2の放出源・吸収源の分布や放出量・吸収量を見積もる際に、大気中のCO2濃度の変動が一つの指標として役立つ」としている。
No.2013-3
2013年1月21日~2013年1月27日