素早い切り替え実現、調光ミラーシートを開発
―新方式で製造コスト大幅低減、大型化も
:産業技術総合研究所

 (独)産業技術総合研究所は1月23日、新方式のスイッチングの採用で、これまでの調光ガラスのおよそ20倍の切り替え速度を実現した調光ミラーシートを開発したと発表した。この調光ミラーシートは、膜厚も10分の1になり、製造コストの大幅低減も期待できるという。
 調光ミラーシートは、窓ガラスなどに使うことで、太陽光を遮って冷房効果を高める省エネガラスが実現できる。
 このシートは大気中の水蒸気から作った水素ガスを、ガラスと調光薄膜間にできる厚さ0.1mm程度の隙間に流し、37cm×26cmの試作品の大きさでは5秒で鏡から透明になるなど状態を切り替えことができる。元に戻すには酸素を流して脱水素すればよい。
 調光ガラスの状態切り替えには電気方式もあるが、構造が複雑でコストが高く、ガス方式は大型ガラスに適するとされるが、耐久性に問題があった。今回、産総研は透明シートに2層からなる調光薄膜をつけ、ガラスに貼り付けた。この方法なら、1m四方でもガス量は約100ccと従来の50分の1ですむ。
 切り替えの速さは、電気方式の従来の調光ガラスの約20倍で、10分かかった1m角のガラスでも約30秒で切り替わる。シートの厚みも100nm(ナノメートル、1nmは10億分の1m)以下と、従来の一般的な電気方式の5層で1μm(マイクロメートル、1μmは100万分の1m)の厚さに比べて約10分の1と、製造コストが大幅に低減される。
 また、これまでのガス方式と違って水タンクも要らず、電気分解用の高分子膜に約3Vの電圧をかけるだけで水素が発生する。この水素は、すぐに調光薄膜に吸収されるので水素漏れの心配もない。
 今回開発の調光ミラーシートは、成膜速度の速い金属薄膜だけなので、従来の電気式調光ガラスに比べて成膜時間が短く、この面でも大幅にコストが下げられる。
 産総研では今後、繰り返し切り替えした時の耐久性評価を進め、光の透過率70%以上に向上させ、最も熱遮蔽効果の大きい自動車フロントガラスへの応用を目指す。また、大型シート作り研究を企業などと共同で進め、建物用の大型窓ガラスへの早期応用も狙っている。

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37cm×26cmの試作品は鏡の状態(上)から5秒で透明な状態に切り替わった(下)(提供:産業技術総合研究所)