有機半導体材料の電子・光学特性を簡便・迅速に測定
―装置を開発、有機ELデバイスの開発加速へ
:物質・材料研究機構

 (独)物質・材料研究機構は8月27日、有機EL(エレクトロ・ルミネッセンス)デバイスなどを構成する有機半導体材料の「バンドダイヤグラム」という特性を簡便に素早く求めることができる測定装置を開発したと発表した。測定する電子特性と光学特性を1つの装置で、しかも大気中で測定できるのが特徴。材料評価がより迅速、正確に行えるようになるため、有機ELデバイスの開発を加速できるとしている。
 有機ELは、面発光する新たなタイプの発光デバイスで、次世代のディスプレーや照明用デバイスとして近年精力的に開発が進められている。素子は、発光や電子・正孔(プラスの電荷を帯びたホール)の輸送などを担う有機半導体層を積層した構成になっており、陽極から注入された正孔は、正孔輸送層のHOMO(最高被占準位)と呼ばれる部位を通って発光層に、また、陰極から注入された電子は電子輸送層のLUMO(最低空準位)と呼ばれる部位を通って発光層にそれぞれ到達し、発光層で正孔と電子が結合してエネルギーを放出することにより発光が生じる。
 正孔、電子が通るHOMO、LUMOの位置は、デバイスの発光効率や省エネルギー特性などに密接に関わっていることからHOMO、LUMOの位置の割り出しは重要な意味を持ち、現在は分光光度計や光電子収量測定装置、あるいは紫外光電子分光装置など複数の装置を用いて位置割り出しに必要なバンドギャップとイオン化ポテンシャルを測定している。
 今回研究チームは、両者を1つの装置で測定でき、また真空環境を用いずに大気中で簡便に測定できる装置を開発した。試料から放出される光電子は、大気中では窒素や酸素分子と衝突して遠くまで飛ばないため、電子を集める電極を試料近くに設置するなどの工夫をした。
 この新測定装置を製造装置に組み込むと製造途中でも膜質などをモニターでき、製造パラメーターの制御などに威力を発揮するという。

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