動作原理を解明、次世代不揮発性メモリー開発に指針
―抵抗変化型メモリー、オフ電流1000分の1以下に成功
:物質・材料研究機構

 (独)物質・材料研究機構は8月30日、低消費電力の次世代不揮発性メモリーとして期待される「抵抗変化型メモリー(ReRAM)」の動作原理を初めて解明、今後の研究開発に新しい指針が得られたと発表した。新指針によれば不揮発性メモリーの弱点とされたデータの書き換え回数制限や耐久性の問題を解決できる可能性があるという。同機構は今後、新指針に基づいて低消費電力のメモリーの試作に取り組む。
 解明したのは、同機構の木戸義勇・元強磁場センター長らの研究グループ。
 不揮発性メモリーは、データの書き換えと読み出し以外は電力を必要とせず、消費電力が小さい。このため、すでに実用化されているフラッシュメモリーは、携帯端末などの素子として広く採用されている。ただ、データの書き換え回数に制限があるなどの課題があるため、金属酸化膜を金属電極ではさんだ単純な構造を持つReRAMが次世代不揮発性メモリーとして注目されている。
 ReRAMは電圧駆動により高速応答する省電力型メモリーだが、耐久性の実証や動作原理が不明なことが実用化の大きな障害になっている。今回の実験では、これらの問題を解決するため、通常は金属酸化膜としてタンタルやニッケルなどの希少元素を使っているのをアルミ酸化膜に置き換えてReRAMを試作、内部の電子状態を詳しく解析した。
 その結果、アルミ酸化膜を用いたReRAMが電子の増減による抵抗変化で動作し、バイポーラ型(オン・オフ動作が電圧の向きの変更で起きる)とユニポーラ型(同じ向きの電圧で電流制限の有無で起きる)のどちらでも動作することやスイッチ動作が高速であることなどが分かり、データの書き換え回数制限や耐久性の問題を解決できる可能性が得られた。さらに、その理由も理論的に説明できた。
 これまでオフ動作の時に大電流が流れて動作が不安定になるとされていたReRAMの電極をこの理論に基づいて改良したところ、電流を1000分の1に小さくできたという。
 研究グループは、今回解明した動作原理について「今後のReRAMの開発指針として有効なことが示された」と話している。

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