高エネルギー加速器研究機構と(独)産業技術総合研究所は5月29日、(独)科学技術振興機構、東京大学、(独)理化学研究所と共同で「TTF-CA」と呼ばれる有機物の結晶がこれまで予想されていた値の20倍以上大きな自発分極(外部からの作用なしで起きる分極)を持っていることを見つけたと発表した。
TTF-CAは、「テトラチアフルバレン-p-クロラニル」の略称。温度変化で熱伝導性や光学特性、誘電性などの物性が大きく変わる特性を持つことから、発見されて30年余り経つ現在も実験・理論両面で注目され続けている期待の有機材料。今回初めて十分な分極-電場特性(P-E特性)を得ると共にこの物質が強誘電性を持つことを実証した。
強誘電性は、不揮発性メモリー、センサー、アクチュエーター、波長変換などの様々なデバイスの機能発現の礎(いしずえ)であり、その性能向上をレアメタルなどの希少金属や、有害な鉛などを含まない有機材料で図ることが喫緊の課題になっている。
強誘電性を持つ有機高分子としては、既にポリフッ化ビニリデン(PVDF)類が実用になっているが、高エネ研などの研究グループは良質なTTF-CA結晶を育成することに成功し、PVDF類と同程度の巨大な自発分極を実測した。
No.2012-22
2012年5月28日~2012年6月3日