(独)産業技術総合研究所と荒川化学工業(株)は5月29日、植物資源の松ヤニの成分であるテルペンから高性能電子材料原料として将来用途が期待されるテルペンオキシドを安全に効率よく合成する技術の開発に成功したと発表した。過酸化水素を使った酸化反応用触媒の新開発とテルペンオキシドの加水分解を防ぐための添加剤の新開発が成功のカギとなった。
松ヤニは蒸溜すると、低沸点成分のテルペンと高沸点成分のロジンに分かれ、ロジンは印刷インキ、塗料、接着剤など様々な用途に使われる。テルペンは、高性能電子材料のテルペンオキシドの原料として期待されているが、これまでの方法は、酸化剤に爆発性の高い過酢酸を使うほか、有機溶媒を多く使うなど安全、環境負荷などに問題があった。
そこで、他の酸化剤を使う安全で環境への負荷が低いテルペンオキシド製造技術として過酸化水素を利用する方法を見つけた。過酸化水素なら酸化反応後の副生物は水だけ。酸化用触媒は、タングステン酸ナトリウムとメチルトリオクチルアンモニウム硫酸水素塩とフェニルホスホン酸から成る三元系触媒が最適と分かった。また、テルペンオキシドの分解を防ぐ添加剤には、硫酸ナトリウムが最適なことも見出した。
新開発の製造技術は、室温で反応は速やかに進み、収率89%を達成している。産総研では今後、触媒技術のさらなる改良、反応に伴う発熱や加水分解機構の検討と装置の改良を目指す。また、荒川化学工業(株)では、年産数t規模の製造工程の確立を急ぎ、事業化を検討している。
No.2012-22
2012年5月28日~2012年6月3日