細胞分裂に欠かせないタンパク質複合体発見
:高エネルギー加速器研究機構/京都大学

 高エネルギー加速器研究機構は5月31日、京都大学と共同で正常な細胞分裂に欠かせないタンパク質の複合体を発見、その働きと立体構造を解明したと発表した。この複合体は、細胞が2つに分裂する最終段階で、分裂に必要な様々なタンパク質を集積する“足場”として働いているという。細胞分裂は、そのプロセスに障害が生じると細胞の死滅やがん化に結びつくなど生命活動維持の基盤になっていることから、今後さらに分子レベルで全体像の解明に取り組む。
 発見したタンパク質複合体は、細胞内で化学エネルギーを運動エネルギーに変換するタンパク質の一種「MKLP1」と、細胞内で起きるいろいろな機能のスイッチ役タンパク質の一つ「ARF1」が結合したもの。
 細胞は、[1]細胞の核内にある染色体DNA(デオキシリボ核酸)が複製され半分ずつに分離、[2]細胞の中央部がくびれて細胞質(細胞内にある核以外の部分)が2つに分離、というプロセスを経て分裂する。このうち後半の細胞質分裂の際には、2つの娘細胞に分裂するときに親細胞のくびれ部分が娘細胞同士をつなぐ架け橋構造となり、レール役となる微小管の束に沿って細胞質分裂に必要なタンパク質が輸送される。
 研究グループは今回、細胞質分裂の際にMKLP1とARF1が結合することでレール役の微小管の束の中央部に集積することを発見、さらに放射光施設から出るX線を利用してその立体構造を解明した。これらの結果から、複合体は架け橋構造内を走るレールを親細胞のくびれ部分にある細胞膜に固定する足場となって細胞質分裂に必要なタンパク質を集積する機能を果たしていると推測している。

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