(独)物質・材料研究機構と(独)日本原子力研究開発機構は5月29日、固体高分子型燃料電池の電極に使われる白金触媒の働きを助ける「助触媒」の役割とそのメカニズムを解明したと発表した。助触媒が白金の身代わりとなって酸化され、白金本来の高い触媒活性の発揮を助けることが分かったという。高価な白金使用量の削減や燃料電池発電の高効率化につながる成果としている。
水の電気分解の逆反応を利用する固体高分子型燃料電池は、100℃以下の比較的低い温度で作動し、小型化しやすく、排出物が水のみでクリーン、などの特徴がある。半面、反応活性が低く、希少な白金を電極触媒に大量に使う必要があるといった問題を抱えている。
この改善に取り組んでいる研究グループは、先に、ナノメートル大(ナノは10億分の1)の酸化セリウム粒子を白金触媒に加えた複合体を開発、これを用いると触媒の反応活性が高まることを見出した。今回、大型放射光施設(SPring-8)のX線を用いた「その場計測技術」(反応が起きている状態で計測できる技術)により、複合体の触媒反応のメカニズムと助触媒である酸化セリウムの役割を調べた。
通常の白金触媒では白金の表面が一部酸化された状態で反応が進行するが、このように表面が酸化された状態では白金本来の高い反応活性は損なわれる。測定の結果、白金-酸化セリウム複合体では、白金と酸化セリウムの接触する界面で部分的な電荷のやり取りが起こり、酸化セリウムが白金の身代わりとなって酸化されることで、白金の酸化が抑制され、白金そのものが持つ高い触媒活性が発揮されていることが分かったという。
今回、白金と酸化セリウムの界面の重要性が明らかになったことから、より効率よく界面を形成することで、活性の高い電極材料の開発が期待できるとしている。
No.2012-22
2012年5月28日~2012年6月3日