(独)国際農林水産業研究センターは9月30日、閉鎖循環式の屋内型エビ生産システム(ISPS)で飼育される「バナメイエビ」のおいしさを科学的に検証したと発表した。
バナメイエビは、東太平洋のメキシコ沖からペルー沖にかけて分布するクルマエビの仲間で、成長が早く、病気にも強く、低塩分でも生存する特徴がある。最近は、東南アジアでも養殖が盛んに行われている。
同センターは、平成19年にエビ養殖技術としては世界初の閉鎖循環式屋内型エビ生産システム(ISPS)を、 (独)水産総合研究センター、(株)アイ・エム・ティー、(株)ヒガシマルとの共同研究で開発した。
ISPSの導入によって、バナメイエビを低塩分海水(0.5%:通常海水の6分の1の塩分)の条件下で集約的に飼育することが可能になり、生産コストを低減することができた。このISPSで生産されたバナメイエビは、刺身でも食べられる安全なエビとして市場にも出回っているが、おいしさの科学的な検証はなされていなかった。
エビなどの甲殻類は、生育環境の塩分濃度の変化により、体の中の遊離アミノ酸含量が変動することが知られている。遊離アミノ酸は、単独で存在するアミノ酸で、水産物の主要な味成分の一つになっていることから、遊離アミノ酸含量の低下はエビの味、すなわち商品価値に大きな影響を及ぼすことが懸念されている。
今回、ISPSで飼育したバナメイエビと市販の養殖クルマエビ類5種類(日本産クルマエビとインドネシア産バナメイエビを含む外国産クルマエビ類4種類)の筋肉中の遊離アミノ酸含量の比較を行った。
その結果、ISPSで飼育したバナメイエビの総遊離アミノ酸含量は、日本産クルマエビと同等で、いくつかの遊離アミノ酸の含量は、他のエビより高い値を示した。
これらのことから、ISPSで飼育したバナメイエビは、日本産クルマエビと同等で、外国産クルマエビ類より優れた食味を持ったエビであることが科学的に検証された。
同センターでは、ISPSは安全にエビを生産できる養殖技術だが、今後はエビ類のおいしさも生み出す養殖技術として一層の普及が期待されると見ている。
この研究成果は、9月30日発行の学術雑誌「水産技術」に掲載された。
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No.2010-38
2010年9月27日~2010年10月3日