(独)農業生物資源研究所は9月27日、東京大学と共同で、昆虫から見つけた新しいたんぱく質の機能を分子の立体構造から突き止めることに成功したと発表した。
類似のアミノ酸配列を持つ既知のたんぱく質から未知の機能を推定する手法は知られているが、新たに見つかるたんぱく質の約5%はアミノ酸配列が既知たんぱく質とほとんど類似性がなく、こうしたたんぱく質の機能推定はこれまで困難だった。同研究所は、たんぱく質の立体構造解析によって機能を解明する新しい道が開かれたとして、今後の分子生物学の発展に大きく役立つと期待している。
新たんぱく質は、沖縄などに生息するカブトムシの一種「タイワンカブトムシ」の体液から見つけた「オリクチン」。66個のアミノ酸で構成されているが、アミノ酸配列が他のたんぱく質のどれとも似ていないため、これまでその働きを解明する手がかりがなかった。
それに対し研究チームは、たんぱく質の立体構造の類似性から機能の解明に迫れないかと考え、多次元核磁気共鳴(NMR)法と呼ばれる手法を用いてオリクチンの立体構造を解析した。さらに、これとよく似た立体構造を持つたんぱく質を探した結果、七面鳥が体内に持っているたんぱく質分解酵素(セリンプロテアーゼ)阻害物質に行き着いた。そこでセリンプロテアーゼに対するオリクチンの活性を調べたところ、特に細菌由来のセリンプロテアーゼなどに対して強い阻害活性をもつことを確認した。
このため同研究所は「オリクチンはタイワンカブトムシの体内で細菌の感染防御の役割を担っているのではないか」と話している。
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No.2010-38
2010年9月27日~2010年10月3日