(独)理化学研究所と(独)産業技術総合研究所は9月28日、アブラムシの体内に生息する特定の共生細菌を種の異なるアブラムシに感染させると、感染前にはある植物を餌にできなかったアブラムシが感染後にはその植物上でも生存、繁殖できるようになることを発見したと発表した。これは、共生細菌の感染によって昆虫の植物適応が生物種を超えて伝播する可能性のあることを示したもので、昆虫の食性進化の解明や新たな害虫防除法の開発などが期待できるという。
多くの昆虫は、ある種の微生物と密接な共生関係を築くことで様々な環境に適応している。たとえば、アブラムシの一種であるエンドウヒゲナガアブラムシは、レジエラ(Regiella insecticola)という細菌を体内に保有し、その存在によって植物のシロツメクサを餌にして旺盛に繁殖している。それに対し、ソラマメヒゲナガアブラムシという異種のアブラムシには、レジエラとの共生関係はなく、シロツメクサを餌にしていない。
両研究所の共同研究チームは、これまでに、エンドウヒゲナガアブラムシの体液をソラマメヒゲナガアブラムシに注入すると、注入されたソラマメヒゲナガアブラムシにはレジエラが移植され、その宿主になり得ることをつかんでいる。そこで今回、レジエラを移植したソラマメヒゲナガアブラムシと移植していないものとをシロツメクサ上で飼育し、その生存能力を比較した。その結果、移植していない方は2日以内に80%が死亡したが、移植した方は生存期間が有意に延び、産仔数の増加も認められたという。
研究チームは今後、共生細菌の異種移植による植物適応の伝播メカニズムなどを分子・遺伝子レベルで解明し、昆虫の新たな性質や能力の獲得、また害虫化などの現象の探究や効果的な害虫防除法の開発につなげたいとしている。
No.2010-38
2010年9月27日~2010年10月3日