(独)産業技術総合研究所は9月29日、高速・広帯域の光ファイバー伝送のエラー要因となるファイバー中での波長による光速の違い(波長分散)を高速可変補償する新技術開発に成功したと発表した。従来技術では、ミリ秒以下の高速での可変補償動作はできなかったが、同研究所は(株)トリマティスと共同でこれまでの100分の1以下(マイクロ秒オーダー)の時間で世界最高速の可変補償動作を達成した。将来の大容量映像情報の低エネルギー伝送実現に繋がる基盤技術が生まれた。
大量の映像情報などを低エネルギーで伝送する次世代技術として注目される回線交換型のダイナミック光パスネットワークでは、時々刻々変化する光ファイバー伝送経路の状態を光スイッチの切り替えで最適化する。その際、光分散の可変補償は不可欠であり、様々な補償技術が開発されている。
しかし、温度や歪みを加えたりする従来の補償法では高速動作が不可能で、伝送経路を切り替えてから通信状態再開までの時間(ガードタイム)が数ミリ秒かかり、柔軟なネットワーク運用を制限するのが問題とされていた。
そこで同研究所は、パラメトリック光可変分散補償という全く新しい方式を提案。光伝送路の切り替えが発生した際、それに応じて瞬時に光可変分散補償する装置を開発し、距離が違う2つの光ファイバー伝送路を光スイッチで切り替える実験でガードタイム125マイクロ秒(1マイクロ秒は100万分の1秒)を得た。補償装置単体の応答時間は、従来技術の100分の1以下の10マイクロ秒という。この応答時間は、世界最高で、補償動作に使う光を発生する小型波長可変レーザーの高速制御で実現した。
これで同研究所が開発した新光可変分散補償技術の原理的な優位性が実証されたとして、次は波長可変光源の高速化による応答時間の向上と、より多くの光伝送路が複雑に切り替わる状況での実証実験に進むとしている。
No.2010-38
2010年9月27日~2010年10月3日