(国)宇宙航空研究開発機構(JAXA)は2月1日、慶応義塾大学、京都大学との共同研究チームが、大規模なコンピューターシュミレーションで金星の北極と南極の極域上空の大気に生じている特異な気温分布を世界で初めて再現、その生成・維持の仕組みを解明したと発表した。
■4月からの「あかつき」本格観測に期待
金星は地球と大きさなどが似ており、地球と「双子星」とも呼ばれているが、高温の二酸化炭素の大気に包まれていて地球とは環境が全く異なる。1970年代の金星探査で、金星の極域上空の大気で、気温が高い領域を冷たい領域が囲っていることが分かってきた。だが、どうしてこのような気温分布が生じ、維持されてきたか、そのメカニズムは不明だった。今回の研究チームは大規模な数値シミュレーションから、その仕組みを説明している。
太陽が金星の雲を暖めることで赤道から極域に向かう南北方向の大気の流れが生じる。この流れが極域上空に集まり、そこから地上に向かって下向きに流れ込む。気体は圧縮されると温度が高くなるので、降下流が起きている領域では大気が周りからの圧縮によって加熱され、温度が上昇する、というのである。
2015年12月、金星周回軌道に乗った金星探査機「あかつき」は搭載機器の機能確認、初期観測を終えれば、金星を9日程度で周回する楕円軌道に移り、2016年4月ころから本格的な観測を始めることになっている。「あかつき」搭載の観測機器での観測で金星の南北方向の大気の流れの強さや気温分布が分かれば、今度の研究に用いた理論モデルの実証につながるという。