(国)農業環境技術研究所は2月4日、花粉を運ぶ昆虫などがわが国の農業に及ぼしている経済的価値を推計、平成25年時点では、こうした花粉を運ぶ「送粉サービス」は約4,700億円に相当すると発表した。また、都道府県別では、青森県が最も送粉サービスの恩恵を受けていることが明らかとなった。環境変化などにより昆虫などの送粉者が減少することは、農産物の生産減やコスト増加に直結するとしている。
■青森、長野県などの果実栽培で大きい依存度
農業は、大別すると水稲や野菜、果樹、花きなどを生産する「耕種農業」と乳牛や肉用牛、ブタ、ニワトリ、養蜂、養蚕などの「養畜」、農作業を請け負う「サービス業務」などに分けられる。
果樹や野菜、養蜂などで昆虫に負うことが大きいのはよく知られたところ。わが国では、セイヨウミツバチやマルハナバチのような「飼養昆虫」以外の野生送粉者による貢献度合いに関する今回のような研究は初めて。
平成25年の農林水産省の統計データを用いて都道府県単位に経済評価を行った。すべての送粉者によるサービスを産出し、セイヨウミツバチなどの飼養昆虫によるサービスを引いて野生送粉者のサービスを算出した。
それによると、送粉サービスの総額は4,731億円で、同年の耕種農業産出額(約5兆7,000億円)の8.3%にのぼる。このうち野生送粉者によるのは3,300億円と推計。野生の送粉サービスへの依存度が高く産出額が大きいのは、リンゴなどの果実で1,952億円、メロンやイチゴ、スイカなどの果実的野菜類が666億円、ナスやキュウリ、トマト、ピーマンなどの果菜類599億円など。わが国の果実類や果菜類の生産が野生送粉者に大きく依存していることが明らかになった。
また、都道府県別では、青森県が耕種農業産出額の27%を依存、山形、山梨、長野、和歌山県などの果実栽培でも野生送粉者への依存度が高いことが分かった。

都道府県別の耕種農業産出額に対する野生送粉者と飼育昆虫の貢献割合(提供:(国)農業環境技術研究所)