タンパク質メチル化酵素の役割を解明
―中枢神経系細胞の分化や成熟に不可欠
:筑波大学(2016年2月4日発表)

 筑波大学の深水昭吉教授らは2月4日、タンパク質のアルギニンをメチル化する酵素である「PRMT1」遺伝子が、中枢神経系細胞の分化や成熟に必須であることを発見したと発表した。中枢神経系の発生や機能維持に重要な仕組みの一端が解明されたとしている。

 

■欠損マウス作り働きを研究

 

 PRMT1は胎生期の中枢神経系で非常に強く発現していることは知られていたが、その役割は未解明だった。

 研究グループは中枢神経系でのみ特異的にPRMT1遺伝子が欠けているマウス(CKOマウス=コンディショナルノックアウトマウス)を作り、中枢神経系でのPRMT1の働きを調べた。

 その結果、PRMT1遺伝子を欠いたCKOマウスは出生後の成長に遅れが見られ、震えや運動失調を呈し、生後2週間ほどで死亡した。子供の脳組織を調べたところ、神経細胞の軸索(樹状突起)に等間隔で巻き付いているべき「ミエリン(膜構造の絶縁体)」が全くなかった。また、神経細胞とともに脳を構成しているグリア細胞の一つ「オリゴデンドロサイト」の成熟細胞や分化段階の細胞の減少が認められた。

 これらの調査結果から研究グループは、アルギニンメチル化酵素PRMT1は脳細胞の一種オリゴデンドロサイトの分化・成熟に必須であり、中枢神経系の発生や機能維持に重要であることが明らかになったとしている。

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