(国)国立環境研究所は2月4日、東京電力福島第一原子力発電所周辺の潮間帯に棲息する無脊椎動物の種類と棲息量が減っていることが明らかになったと発表した。原因は今後の調査によるが、津波だけで引き起こされたとは考えにくく、「原発事故による可能性がある」としている。
■「原発事故による可能性がある」
国環研は(国)放射線医学総合研究所と福島県の協力を得て、東日本大震災が起きた年の平成23年12月に第1回目の潮間帯生物の調査(予備調査)を実施、その後も調査を継続しているが、今回は平成25年までの調査結果を取りまとめた。
潮間帯は満潮時海岸線と干潮時海岸線に挟まれた部分で、ここには藻食性あるいは肉食性の巻貝や二枚貝、フジツボやヤドカリといった甲殻類などの潮間帯生物が棲息している。
平成23年の予備調査では福島第一原発から半径20km圏内16地点で、巻貝のイボニシを採集あるいは目視観察、またその他潮間帯生物を目視観察した。震災以前の平成7年に東京電力が福島県沿岸で行った調査では潮間帯にさまざまな無脊椎動物の棲息が認められたが、平成23年の調査で採集されたイボニシは1地点1個体のみ。その他の潮間帯生物についても観測例は少数で小型個体だった。
翌平成24年は4月~8月にかけて、半径20km圏内(10地点)に加え、千葉、茨城、福島、宮城、岩手の5県33地点の計43地点で潮間帯に棲息する無脊椎動物の種類、密度を詳細調査した。
その結果、棲息している無脊椎動物の種類は福島第一原発に近付くほど少なく、そのうちイボニシは約30kmの範囲内では全く採集されなかった。
平成25年は5、6月に、茨城、福島、宮城3県7地点で無脊椎動物の採集調査を実施。それによると、無脊椎動物の種類数と棲息量は福島第一原発の近傍、特に南側の大熊町、富岡町で少なく、平成7年の東電調査結果と比較しても少なかった。この傾向はフジツボ類などの節足動物で顕著だった。
福島第一原発近傍でのこうした潮間帯生物減少の原因について調査チームは、他の地域の棲息状況から見て、津波によって引き起こされたとは考えられず、原発事故による可能性があると指摘、その影響として例えば、漏出した多種大量の放射性核種による被ばくのほかに、ホウ酸やヒドラジンなどの有害化学物質の流出などをあげている。今後も調査を継続し、多角的な視点で原因の究明に迫りたいとしている。