
今回作製した約1cm角のペロブスカイト太陽電池セル(黒い部分)(提供:(国)物質・材料研究機構)
(国)物質・材料研究機構・太陽光発電材料ユニットは11月2日、ペロブスカイト太陽電池の有機材料を無機材料に置き変えることで、セル面積1cm2以上で16%の変換効率を高い信頼度で達成したと発表した。ペロブスカイト太陽電池は、低コスト、軽量で変換効率も上昇しているが、不安定で信頼性に欠けるのが難点だった。これを克服する見通しがついたことで、実用化への開発競争に一気に弾みがつきそうだ。
■目標は火力発電並みのコスト達成
ペロブスカイトはチタン酸カルシウムの鉱物の別名で、2価、4価の金属イオンと酸素イオンの結晶構造をもつ化合物の総称にもなっている。現在実用化されている太陽電池はシリコン系と化合物系の2系統があり、ペロブスカイト太陽電池は2009年に日本で発見された新興勢力として注目されている。
資源の豊富な材料を使い、比較的低温で作成できるため安価、軽量で、しかもガラスや壁に塗布するだけで設置できる利点がある。セルの変換効率は外国で約20%が報告されているものの、再現性がなく不安定のため信頼性の向上が課題だった。
研究チームは、有機材料が太陽光に長時間さらされると劣化しやすいことから、金属系の無機材料に置き変えた。電子を取り出す電子抽出層にはニオブイオンを、ホール抽出層にはリチウムイオンとマグネシウムイオンを高濃度で混ぜ、電気の通りやすさを高めた。実用化の目安とされる1000時間の太陽光連続照射試験でも変換効率(16%)の劣化が10%以内に抑えられた。
物材機構では今年に入ってペロブスカイト太陽電池の研究成果を連続して報告している。5月にはセル面積1cm2で変換効率15%を、8月には太陽光の吸収範囲を長波長側に広げて変換効率を上げた。さらに同月、ペロブスカイト材料の劣化のメカニズムを理論計算によって明らかにするなど研究所を挙げて取り組み、ゆくゆくは火力発電並みの1kw当たりのコスト7円を目指している。