筑波大学は11月5日、目覚めや覚醒の維持に関わっている脳内産生ペプチドの「オレキシン」の受容体作動薬を創り出すことに成功したと発表した。開発した薬物は覚醒時間を延ばしたり、睡眠発作などを起こすナルコレプシーを改善したりする効果がマウスによる実験で認められた。腹腔内投与でも効果があることから睡眠疾患の治療に大きな希望が持てるという。
■25万種を超える化合物から絞り込み
研究チームの柳沢正史教授らは20年ほど前にオレキシンとその受容体を発見し、これらが覚醒の維持・促進などに重要な役割を果していることを見出した。その後、脳内オレキシンの欠乏がナルコレプシーの病因であることが判明したり、オレキシン受容体拮抗薬が不眠症治療薬として開発されたりしている。
研究チームは今回、脳内に投与せずとも全身投与(腹腔内投与)で治療効果が期待できる低分子オレキシン受容体作動薬の開発を目指し、25万種を超える化合物から候補を絞り、2000種以上の誘導体を設計・合成して最終的にオレキシン受容体を選択的に作動させる低分子化合物を見出した。
この化合物を睡眠中のマウスの脳内に投与したところ顕著な覚醒誘導効果を確認、また、ナルコレプシーを人為的に発病させたマウスで症状の改善を認めた。研究チームはこうした成果をもとに、今後世界初のナルコレプシー治療薬の開発を目指すとしている。