
開発したプロブスカイト太陽電池の模式図と素子断面の走査型電子顕微鏡写真(提供:(国)物質・材料研究機構)
(国)物質・材料研究機構は6月24日、低温・溶液プロセスで安定性や信頼性、耐久性の高いペロブスカイト太陽電池を作製したと発表した。次世代太陽電池として注目されているペロブスカイト太陽電池の実用化に向け、研究開発の大きな前進が期待できるという。
■結晶の生成過程で塩素を添加
ペロブスカイト太陽電池は、結晶構造がペロブスカイト型と呼ばれる化合物を含む太陽電池。光電変換効率が高く、比較的安価な方法で作れることなどから、近年各国で研究が活発になっている。
研究チームが今回用いた製法は、熱処理温度が低く、溶液の塗布で作製できる低温・溶液プロセスという手法。軽くフレキシブルなプラスチック基板上に電池素子を形成できるなどの特徴がある半面、この手法でこれまでに作られたものは、データのばらつきが大きく、効率が安定しない、信頼性や再現性、耐久性に劣るなどの問題があった。
研究チームは、ペロブスカイト結晶を生成する過程に塩素を添加する新たな製法を開発し、これらの問題点を改善した。
新製法で得られた太陽電池は、約2時間光を連続照射しても出力が劣化しない、ガラスで封止したものは2カ月以上にわたり初期の性能を維持している、などの性能向上が認められた。
この結果、試作した素子の性能・動作を詳細に解析でき、これまで困難だったペロブスカイト太陽電池の動作メカニズムの解明が飛躍的に進むことが期待できるという。